ニュースの概要
実家を売るための片付けで、まだ健在の両親の繰越済み通帳が50冊以上出てきた、という相談を扱った報道です。記事では、本人が元気でも通帳には過去の入出金や口座情報が残り、相続や税務の確認に関わる可能性があるため、数が多いという理由だけで一括して捨てるのは避けるべきだと指摘しています。まず現在使っている口座や休眠口座との関係を確かめ、未解約の口座、ローン、公共料金、保険、税金などに関する記録がないかを見たうえで、処分してよいかを考える流れが示されています。
引用元: 実家売却の片付けで大量の繰越済み通帳、処分前に確認すべき点(Chiba Television Broadcasting)
分析・見解
50冊の通帳は、家計の年表として読める
実家の片付けで通帳の束が出てくると、多くの人は「古いし、全部使い終わっているから捨てよう」と考えます。繰越済み通帳とは、記帳欄が満杯になり、新しい通帳に引き継がれた古い通帳のことです。残高はすでに新しい通帳へ移っているため、今の預金額を知るだけなら確かに不要に見えます。
しかし通帳は、数十年分の入出金が日付順に並んだ家計の年表でもあります。給与や年金の入金、保険料や住宅ローンの引き落とし、子や孫への大きな送金。こうした履歴は、ほかの書類では代わりがききにくい情報です。
本人が元気でも、確認が要る場面は意外に多い
今回のように両親が健在な場合、相続はまだ先の話に見えます。それでも確認が必要になる場面はあります。親の介護費用を子が立て替えたかどうかの整理、高額な贈与の記録、親が認知症になったときの財産把握などです。判断力が落ちてからでは、本人に「この口座は何か」と聞けません。
もう一つは、使っていない口座の存在です。通帳の表紙には金融機関名、支店名、口座番号が載っています。最新の通帳が見つからない口座が混じっていれば、それは解約し忘れた休眠口座かもしれません。取引が10年以上ない預金は、休眠預金等活用法にもとづき公益活動に移される仕組みがあります。移された後も引き出しの請求はできますが、手続きは面倒になります。
税務署が見るのは、まさに古い通帳の動きである
相続が起きたあと、税務署は名義預金を調べることがあります。名義預金とは、名義は子や孫でも、実際のお金は親のものである預金のことです。このとき、過去の入出金の流れが重要な手がかりになります。金融機関に取引履歴を請求すれば、多くは過去10年程度さかのぼれます。ただ、それより古い分や、すでになくなった支店の記録は出てこないことがあります。手元の通帳が唯一の証拠になる場合もあるわけです。
逆の使い方もできます。親の口座から子の口座へ移したお金が、生前の正当な贈与や生活費の援助だったと説明するとき、通帳の記録は味方になります。捨てた後で疑いをかけられても、説明する材料が残りません。
全部残すのではなく、仕分けの順番を決める
かといって、50冊を永久に保管するのは現実的ではありません。おすすめは三段階です。まず、全冊の金融機関名、口座番号、最終記帳日を一覧にします。次に、現在も使う口座、未解約の口座、解約済みの口座に分けます。最後に、解約済みで最終取引が十分に古いものから廃棄候補にします。
廃棄するときは、口座番号が読めないよう裁断するか、溶解処理を使います。そのまま可燃ごみに出すと、個人情報の流出につながります。写真やスキャンで目録を残しておけば、現物を減らしても手がかりは失われません。
ビジネスへの影響
通帳の扱いは、片付けを請け負う側の責任の境目になる
実家の整理を仕事として受ける不動産会社や遺品整理業者にとって、通帳は見落としやすい責任の境目です。作業員が現場の判断で処分すると、後日「あの通帳がない」とトラブルになります。見積もりの段階で、通帳、印鑑、証書類は処分せず依頼主に引き渡すと明記するだけで、紛争はかなり減らせます。
個人の側でも、売却の期限が決まっていると作業は急ぎがちです。売却日から逆算して、通帳の仕分けは最初の週末に終えるのが安全です。廃棄前に表紙だけ写真に撮っておく運用も、あとから口座を探すときに役立ちます。
金融機関や士業には、片付けの入口に商機がある
銀行や信託銀行は、相続の相談を亡くなった後に受けることが多いのですが、実際には片付けの段階で資料がなくなります。実家整理の時期に使える口座一覧表やチェックシートを配れば、将来の手続きの依頼につながります。司法書士や税理士も、通帳の目録づくりを定額の小さなサービスにして、入口に使えます。
企業の福利厚生でも、親の介護や実家の整理は離職のきっかけになりやすい悩みです。相談窓口に「捨てる前の確認リスト」を用意しておけば、従業員の負担を軽くできます。
今日からできる三つの手順
一つ目は、口座一覧を作ることです。二つ目は、未解約の口座がないか、金融機関に照会することです。三つ目は、廃棄を裁断業者か溶解便に頼み、処分日と数量を記録することです。この三つを済ませてから動けば、時間をかけずに安全な片付けができます。
費用は、溶解処理なら一箱数千円程度が多く、相続後の調査費用や再発行の手数料に比べれば小さな出費です。急いで捨てて後悔するより、一週間かけて確認するほうが、結果として手間も費用も少なくなります。
